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第1回(R2-10-09)

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/toushi/20201009/gijiroku1009.pdf#page=4

○森トラスト(伊達代表取締役社長) 森トラストの伊達でございます。

 本日はプレゼンの機会をいただきましてありがとうございます。

 本日、画面にございますとおり、5つの目次を基に宿泊施設のフロントレス導入に関連 した現状と要望についてお話します。

 まず、簡単に森トラストについて御説明します。

 私どもは不動産デベロッパーで、都心部でオフィス開発を進めておりますが、同時にホ テル事業においても50年にわたる活動をしております。現在、所有・運営しているホテル は、全国で27。日本ブランドの展開とともに2000年ごろからは東京、地方展開としてイン ターナショナルブランドの開業を進めてまいりました。本年も、このコロナの状況ではご ざいますが、3施設を開業しております。

 さて、次に私どもがホテル運営事業者として感じている課題についてお話します。

 ここ数年、政府のインバウンド政策の効果もあり、観光産業は飛躍的に伸びてまいりま したが、同時に宿泊事業は様々な課題を抱えております。

 御承知のように慢性的な労働力の不足は顕著であり、他業種と比べかなり低い生産性も 改善する必要があります。その際に、ITの導入を進め、不足する人員保管や付加価値を生 む業務にシフトさせ、その次の展開に進む必要があります。

 こうしたデジタルトランスフォーメーションの流れに、データの一元管理も含めて事業 者として前向きに向き合っていく必要があると感じています。

また、ユーザーに対しても最もストレスを与えているのが混雑時のチェックインの待ち 時間ということもあります。こうしたところを改善しフロントサービスが手厚いというこ とよりも、滞在中の付加価値を上げるというようなサービスに展開して、本来の旅行の目 的、ディスネーションになるような旅行意欲を湧かせるような取組が必要だと考えていま す。よって、宿泊業界における観光デジタルトランスフォーメーションが必要になってい きます。

 それでは、宿泊業務とデジタルに関連する法規、実態についてお話します。

 大分以前になりますが、2005年にe-文書法が改定され、宿泊者名簿の電磁的記録の保存 が可能になっています。

 ホテルでの宿泊者名簿は法令に従って数年分保管することが義務づけられていますが、 紙ではこれはかなりの場所を取るというものになります。新規開業のホテルで電子保管が できましたので、昨年にはなるのですが既存のホテルについても適応を行政に確認しまし たが、NGという回答がございました。電子保管の可否について、自治体の回答にばらつき があるようです。

 次に、フロント業務についてです。

 フロントレスでチェックインができるという仕組みについては、2015年ぐらいからイン ターナショナルブランドではリリースされ始めていました。これに対し、日本では旅館業法の縛りがあり、グローバルチェーンでありながらも導入ができないという状況でした。 そのような中、2018年、旅館業法の改正に伴い一連の法令が施行され、フロントレスが可能になりました。 そこで、私どもとしましてもオペレーションとゲストの利便性の向上を図る仕組みとして、顔認証技術を活用したフロント無人化について、あるリゾート施設での導入を進めて まいりましたが、保健所との協議に大変時間がかかり、時間的にタイムリミットが来たと いうこともあり断念しております。非対面へのチェックインの可否についても、自治体に よる回答が異なっている状況です。

 こうした法令はあるものの協議に時間を要し、また指導内容にばらつきがあるというの が、事業者にとっての見解になっています。

 そこで、こうした実態が起こる要因を整理してみました。

 法令の改正による玄関帳場の機能、いわゆるフロントになりますけれども、その必要性 というものがそもそも何であるのか。その機能が代替されるのであればいいということが 法令に書かれています。

 そのフロントの機能というのは何かというところで、緊急時の対応として10分以内に駆 けつけられるという環境が整っていること。そして、鍵の受け渡しに関して、宿泊者名簿 に正確な記載がされる。鍵の受け渡しが適切である。そして、ビデオ等により出入りの状 況を確認できるということができればよいということになっています。

 この要件を満たせば、ハードとしてのフロントは設置しなくてもよいという意味で、比 較的分かりやすいものになっています。

 しかしながら、フロントを置かないでどのようなサービスをするのか。その場合に、ICT 技術を導入して非対面によってこのフロント業務という作業をするためにも、具体的なル ールが明記されていないという状況のため、運用については各地域の裁量に委ねられてい るといった状況です。

 次のページで、実際の導入事例とその実態をメーカーにヒアリングしたものについてお 話いたします。

 まず、フロント業務では必要確認事項は、大きく分けると3つになります。

 宿泊者の情報の正確性を確認する義務があります。これは、住所・氏名・職業等になり ます。その確認においては、デジタルによるチェックインの仕組みを取り入れたとしても、 この確認はデジタルではなく有人で対応するようにという指導を受けています。つまり、 機械によるチェックイン作業を顧客がしたとしても、非対面でいいのですが、実際にはバ ックに人が配置され、人の手によって確認をしなければなりません。

 そして、ホテルはチェックインとして、最終的に承認という作業をするのですが、その 承認作業についても全ての条件がそろい、そして機械によって対応するということではな く、あくまでも最終承認は人が行うように指導を受けています。

 そして3つ目として、本人確認という義務があります。令和元年7月のFAQで追加されたものになりますが、ICT技術を活用した本人確認というのは可能であるということはでき ているのですが、一方でその方法論として顔認証技術を中心とした生体認証に限定しがち な傾向になっています。

 こういった状況から、ここまでお話したケース1から3から見える課題として、まずデ ジタルチェックインが可能でも、現時点では有人でのフロントオペレーションが残ってし まっているという状態。

 電子認証方式や顔認証中心のため、投資コストが非常にかさむという状況にありますの で、新規開業施設に限られる傾向にあるということ。

 そして3点目として、本人確認と予約確認という関係性がやや不明だということです。 例えば、本人確認につきましては、日本人の場合パスポートで顔写真つきのIDカードを見 せたり、いわゆる運転免許証やIDカードを見せるというわけではありませんので、実際の 顔を見て本人を確認できるかというと、現実的ではありません。

 そうしますと、本来であれば予約を取っていただいた方かどうかを確認したいというの が事業者の立場なのですが、それに対して行政指導としては、本人であることを確認しな さいということになっております。その辺りが現実の自治体の運用との矛盾を感じている ところです。

 そして、4つ目になりますが、行政による指導がエリアによってややばらつきがあり、 そのため協議に時間を要するという傾向があるという課題があります。

 以上が事業者から見た現在の状況です。 最後に、問題解決に向けた提言をさせていただきます。 今、このような状況ですが、観光は必ず復活し日本経済の成長に資するものであると考えています。これまでの観光業界がもつ課題を今のうちに解決し、観光のDXを推奨するこ とをぜひ明確な方針として続けていただきたいと考えています。

 基本的な考え方として、人の判断が不要でかつデジタルが得意とすることはデジタル化 利用で進めるということ。例えば本人確認における住所というのは、記載のミスをチェッ クするのはシステムのほうが人間よりも恐らく優位であると思います。そういったものは システムによって代替可能な状況にすることがよろしいのではないかと思っています。

 また、同意書保管であったり受け渡しというものは、管理がしやすくなってきますし非 接触という意味でも安全性が向上してきます。また、本人確認の目的を明確にしていただ き、顔認証技術だけに限定しないような予約認証としての技術もぜひ許可していただきた いと考えています。例えば、QRコード等を使いながら予約が確実に確認できるような仕組 みも、宿泊のチェックインの中でも取り入れていただきたいと思っています。

 どうしても、デジタル認証というのは生体認証が中心になりますし、その投資コストは かさんでしまいます。デジタル化に伴って、もっと簡易な方法を入れていくということが 重要だと思いますし、また現在のところ個別の指導が多いために実際、取り入れようとし ている企業さんに合わせてメーカー側で全ての対応をカスタマイズしているというような状況のようです。 そういう意味では、ICTルール、チェックインにおけるルールを全国的に統一していただきまして、業界の生産性の向上を図れるように地方経済を働かせていただきたいと思って います。

 また、現在の保守的な指導内容の見直しをしていただくべく、現場への周知徹底をして いただきたいと思います。また、基本的にはいわゆるチェックインという1つのテーマで あったとしたら、それ自体はさほど個別性を要するものではありませんので、指導や方法 論についても全国で統一を図っていただき、ぜひ普及の早期実行を速めていただけるよう にしていただきたいと思っております。

 報告は以上になります。