「規制改革推進に関する答申(令和3年6月1日)」の版間の差分

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 今後は、ベース・レジストリと個人情報の取扱いに係る整理を横展開し、複数行政主体が保有する台帳間連携を推進すること、サイバー空間と実空間の接続・融合の進展で不可避となる基本的な法体系の整備を推進すること<ref>デジタル時代の刑事法の在り方(令和3年5月18 日規制改革推進会議)</ref>が必要となる。
 
 今後は、ベース・レジストリと個人情報の取扱いに係る整理を横展開し、複数行政主体が保有する台帳間連携を推進すること、サイバー空間と実空間の接続・融合の進展で不可避となる基本的な法体系の整備を推進すること<ref>デジタル時代の刑事法の在り方(令和3年5月18 日規制改革推進会議)</ref>が必要となる。
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==カ デジタルガバメントワーキング・グループ==
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https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/toshin/210601/toshin.pdf#page=10
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 デジタルガバメントワーキング・グループにおいては、まずは、令和2年3月までに行政手続コスト20%以上の削減を目指すとの政府目標を実現する観点から、行政手続の電子化、ワンスオンリー、書式・様式の統一等に取り組み、目標を達成した。さらに、行政手続コストの更なる削減や行政の高度化のためには、行政手続のデジタル化が不可欠との認識の下、また、コロナ危機によって、書面・押印・対面の見直しが急務とされたことを受け、行政手続における書面・押印・対面の抜本的見直し等に取り組んだ。その結果、99%超の手続で押印義務が廃止され、97%超の手続が令和7年末までにオンライン化する方針が示されたほか、行政の契約においてクラウド型の電子署名が利用できるようになる等の改革が実現した。
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 また、オンライン利用率を大胆に引き上げる目標を設定しPDCAを回す取組みや、事業者と地方公共団体の間の手続について、所管府省が、書式・様式の標準化等を進めつつ、オンライン化を行う取組も開始された。しかし、デジタル化のメリットを100%享受できる社会や、デジタルガバメントの実現に向け、依然として課題は山積しており、更なる取組が必要である。
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==1.成長戦略ワーキング・グループ==
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https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/toshin/210601/toshin.pdf#page=12
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 成長戦略ワーキング・グループでは技術の革新に合わせた規制の在り方を議論し、新たな価値を生み出す規制改革を推進してきた。
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 デジタル技術の進展は、ビジネスや働き方、生活習慣などあらゆる分野で大きな変化を生み出しつつある。企業は、デジタル技術により業務の効率化を図り、データの活用によって潜在需要を開拓して新たな収益源を確保することが可能になる。また、生活者一人一人のニーズに応えたデジタル技術を活用した様々な非接触サービスが生まれることで、新たな時間の過ごし方が増えるなど、個人も、手間の削減による利便性向上や可処分時間の向上などを享受できるようになってきている。
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 このような中で、依然として、押印や書面、対面を通じて行われる伝統的な情報のやり取りが、技術革新の恩恵の広がりを阻む要因となっている。例えば、経理事務では、請求書や領収書のやり取りと入力作業など人の業務に頼った仕組みが少なからず残っており、取引情報の収集や一層の分析・活用を行う余地はいまだ大きい。法令に書面原則などの根拠を有するものはデジタル社会に即応して見直されなければならない。
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 また、デジタル時代の基盤となるベース・レジストリ(公的情報基盤)については、重要性が長く唱えられながらも、肝となる行政の台帳間連携が進まず、理由すら明らかにされてこなかった。問題点の特定と精緻な解決がなされない限り、情報の出し手と受け手の両睨みが続くにすぎない。そこで成長戦略ワーキング・グループは、他の例に応用可能な形で個別事例の解決策を見出す方法でアプローチすることとした。
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 利便性向上に向けた取組を推進すると同時に、安全性を確保することも忘れてはならない。デジタル時代においては、家電や自動車、工場などがデジタル技術を通じてネットワークで結ばれるようになる。サイバー空間における脅威が、ネットワークを通じて人の安全や生命にも影響を及ぼす可能性が高まっている。こうした新たな脅威に対しては、技術と法規制の双方の観点から対応を考えていく必要がある。法規制の強化であっても、デジタル化のための企業活動を円滑に進めるためには必要であり、こういった点について、規制改革の文脈で議論を行うことが重要である。
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 企業の成長戦略を論じる上で気候変動問題も避けて通れない。企業は数々の技術革新により二酸化炭素の排出を削減する技術を蓄積してきた。カーボンニュートラルを目指すためには、まずは二酸化炭素を出さない技術の推進が重要であるが、将来の選択肢の一つであるCCS(二酸化炭素の回収・貯留)についても、最新の技術を反映して規制を刷新していく必要がある。
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 以上を踏まえ、安心安全とイノベーションの両立に配慮し、イノベーションを支える基盤整備を着実に進めていくという観点から、今後取り組むべき規制改革項目を以下のとおり取りまとめた。
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===(1)民間における書面・押印・対面規制等の見直し===
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【a:令和3年度上期措置、b:令和3年度中に必要に応じて措置、c~g:措置済み】
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<基本的考え方>
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令和3年5月にデジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律
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 (令和3年法律第 37 号)が成立し、押印や書面の交付等を求める手続を見直す48法律の一括改正が行われるなど、書面、押印、対面規制の見直しが加速度的に進められている。これにより、各種手続のデジタル化を阻害する基本的な規制が改革された。
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 しかしながら、これらの見直しをデジタル社会の形成や感染症拡大防止の観点から実効性のあるものとするためには、規制の見直しに加えて、手続のデジタル化が着実に浸透するようフォローアップしていく必要がある。
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 以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。
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<実施事項>
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<ol type=a>
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  <li>内閣府及び法務省は、民法(明治29 年法律第89 号)第486 条の改正により、令和3年9月から弁済に係る受取証書について電磁的記録の提供の請求が可能となることを踏まえ、施行後に小売店等の店頭において混乱を来さないよう、あらかじめQ&A等で法令解釈を明らかにし、広く周知を図る。
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  <li>法務省は、令和3年10 月以降に開催される株主総会について、新型コロナウイルス感染症の影響により株主総会資料のウェブ開示によるみなし提供制度の対象を拡大する措置が引き続き必要となった場合には、当該措置を講ずる。
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  <li>経済産業省は、株主総会プロセスにおける企業と株主による対話の充実に向けて、ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施の推進のため、実施ガイドなどの更なる充実を図る。
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  <li>国土交通省は、不動産の売買取引におけるオンラインによる重要事項の説明について、社会実験の結果を踏まえ、ガイドラインを改定し、テレビ会議等による非対面の説明が可能である旨を明らかにする。
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  <li>国土交通省は、設計受託契約・工事監理受託契約に係るITを活用した重要事項の説明について、暫定的に運用しているテレビ会議等による非対面の説明を本格的に運用するためのガイドラインを整備する。
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  <li>国土交通省は、建築基準法施行規則(昭和25 年建設省令第40 号)において義務付けている建築確認申請等における図面への押印を不要とするよう見直しを行い、改正措置を講ずる。
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  <li>国土交通省は、建築士法(昭和25 年法律第202 号)第23 条に基づく建築士事務所の都道府県知事への登録について、同一都道府県内に複数の業務拠点を設けようとする場合等において、合理的な登録が可能となるよう要件を整理し、関係者に周知する。
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</ol>
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===(2)デジタル社会の基盤整備===
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ア 公的情報基盤の整備・連携
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【令和3年度上期措置】
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<基本的考え方>
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 データ駆動型社会と言われ、あらゆる社会活動でデータ活用がされる中、社会の基盤となる情報をデータで整備し、連携・活用を図ることが一層重要となっている。
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 特に、人、法人、土地、建物、資格等の公的情報基盤(ベース・レジストリ<ref>2 ベース・レジストリ・ロードマップ(令和2年12 月21 日デジタル・ガバメント閣僚会議決定)において、IT室が指定することとされている。</ref>を含む)については、社会の基本データとして、正確性や最新性が確保されたデータベースを整備するとともに、そのデータについて適切なアクセス・コントロールを設定し、できるだけ広く連携・活用を図ることが必要である。その際、各情報の個人情報保護に係る取扱い(※)について整理を行うことが重要な課題の1つとなる。
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(※)保有個人情報に該当するか否か、該当する場合、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15 年法律第58 号。以下「行個法」という。)第8条<ref>デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律による改正後の個人情報の保護に関する法律(平成15 年法律第57 号)第69 条</ref>の規定に基づく目的外利用又は提供が可能か否かを始めとする各種個人情報保護法制における取扱い。
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 成長戦略ワーキング・グループでは、事例の1つとして、土地・地図情報のデータベース整備において重要な情報である「地番」<ref>登記所が一筆の土地ごとに付するものであり、悉皆性・唯一性という観点から土地・地図情報のデータベースを作成する際、各筆の指標として利便性の高い情報である。</ref>について取り上げ、個人情報に係る取扱いの整理について議論を行った。
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 「地番」については、まず先行して関係府省において取扱いの整理を行うとともに、今後、ベース・レジストリの整備において必要となる情報の取扱いについて、個人情報保護に係る取扱いを順次検討していく必要がある。また、並行して、今後個々の情報について個別に検討を行うことの限界も踏まえ、公的基盤情報の整備という類型に適用される個人情報保護に係る取扱いルールについて、一定程度横串を刺した整理のための検討を行う必要がある。
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 以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。
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<実施事項>
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 内閣官房、内閣府、個人情報保護委員会、総務省、法務省及び農林水産省は、「地番」情報の個人情報保護に係る取扱いについて、情報の活用と個人情報保護の両面から整理を行う。
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イ アジャイル型システム開発に係るルール整備
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【a:措置済み、b:令和3年度上期検討開始、結論】
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<基本的考え方>
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 デジタル時代において、国際的な競争が加速する中、より速いスピードでシステムやソフトウェアの開発、提供が求められており、計画、設計、実装、テストを繰り返すアジャイル型のシステム開発が注目されている。開発に携わる企画者、設計者、プログラマー、テスター、運用者等は、通常、発注企業と受注企業、さらに受注企業の委託先等にそれぞれ属しているが、アジャイル型のシステム開発においては、ノウハウやアイディアを共有する観点から、上記関係者間において、綿密な意思疎通の下で協働することが不可欠となる。しかし、現行法制下では、これが直接的な指揮命令として、労働者派遣法(昭和60 年法律第88 号)5が禁止する「偽装請負」に該当すると判断される可能性がある。この点について、法的リスクがあるためにアジャイル型のシステム開発に踏み切れない、あるいはアジャイル型でシステム開発を実際に行ったとしても、偽装請負に該当すると判断されないようリスク回避のための管理コストや時間をかけており、速いスピードでの開発というアジャイル開発のメリットを十分に享受できない、といった声が上がっている。厚生労働省においては、こうした実態を踏まえ、早急に検討を行い、環境整備に努めることが求められる。
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 なお、労働者の過重労働や下請事業者の不当な取扱いが是認されることを求めるものではなく、また、アジャイル型開発であれば、全て指揮命令に当たらないとの解釈を求めるものではない。
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 以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。
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<実施事項>
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<ol type=a>
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  <li>厚生労働省は、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61 年労働省告示第37 号)に関する疑義応答集6が、「システム開発」の現場にも適用され得る考え方であることを明確にし、周知を図る。
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  <li>厚生労働省は、関係府省とも連携の上、アジャイル型開発の環境整備に向け、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準の具体的当てはめの明確化について、新しい開発手法を活用するベンチャー企業等を含めた実務者会合を早期に立ち上げ、システム開発の実態を踏まえつつ検討を行う。その結果に基づいて疑義応答集等で考え方を明らかにし、広く周知を図る。

2021年7月29日 (木) 05:00時点における最新版

ア 成長戦略ワーキング・グループ

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/toshin/210601/toshin.pdf#page=8

 成長戦略ワーキング・グループにおいては、経済・企業の活力を活性化させ、成長軌道に乗せる観点から、イノベーションを促す成長加速型の規制改革に取り組んできた。他のワーキング・グループの専門的知見を尊重し連携して取り組むため、医療や物流等の個別分野ではなく、基盤的、横断的課題に取り組むことに主眼を置いている。  この観点から、まず、目視・打音原則の見直し、対面・書面・押印原則の見直し等を内容とする「デジタル時代の規制・制度について」(令和2年6月22 日規制改革推進会議)を取りまとめている。

 また、コロナ禍対応の必要性の観点から書面・押印の見直しの基盤となる「押印についてのQ&A」(令和2年6月19 日)、「就労証明書に関して押印を省略した場合又は電子的に提出した場合の犯罪の成立についての整理」(令和2年9月4日)等を示した。この取組は、デジタル関連法案の48 の法律を束ねた押印・書面の一括改正法として(令和3年5月19 日公布)結実した。

 この他、電子署名法の解釈の見直し、株主総会プロセスのデジタル化、アジャイル型システム開発の推進、不動産流通の更なる透明化、二酸化炭素地下貯留の規制改革などに取り組んできた。

 今後は、ベース・レジストリと個人情報の取扱いに係る整理を横展開し、複数行政主体が保有する台帳間連携を推進すること、サイバー空間と実空間の接続・融合の進展で不可避となる基本的な法体系の整備を推進すること[1]が必要となる。

カ デジタルガバメントワーキング・グループ

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/toshin/210601/toshin.pdf#page=10

 デジタルガバメントワーキング・グループにおいては、まずは、令和2年3月までに行政手続コスト20%以上の削減を目指すとの政府目標を実現する観点から、行政手続の電子化、ワンスオンリー、書式・様式の統一等に取り組み、目標を達成した。さらに、行政手続コストの更なる削減や行政の高度化のためには、行政手続のデジタル化が不可欠との認識の下、また、コロナ危機によって、書面・押印・対面の見直しが急務とされたことを受け、行政手続における書面・押印・対面の抜本的見直し等に取り組んだ。その結果、99%超の手続で押印義務が廃止され、97%超の手続が令和7年末までにオンライン化する方針が示されたほか、行政の契約においてクラウド型の電子署名が利用できるようになる等の改革が実現した。

 また、オンライン利用率を大胆に引き上げる目標を設定しPDCAを回す取組みや、事業者と地方公共団体の間の手続について、所管府省が、書式・様式の標準化等を進めつつ、オンライン化を行う取組も開始された。しかし、デジタル化のメリットを100%享受できる社会や、デジタルガバメントの実現に向け、依然として課題は山積しており、更なる取組が必要である。

1.成長戦略ワーキング・グループ

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/toshin/210601/toshin.pdf#page=12

 成長戦略ワーキング・グループでは技術の革新に合わせた規制の在り方を議論し、新たな価値を生み出す規制改革を推進してきた。

 デジタル技術の進展は、ビジネスや働き方、生活習慣などあらゆる分野で大きな変化を生み出しつつある。企業は、デジタル技術により業務の効率化を図り、データの活用によって潜在需要を開拓して新たな収益源を確保することが可能になる。また、生活者一人一人のニーズに応えたデジタル技術を活用した様々な非接触サービスが生まれることで、新たな時間の過ごし方が増えるなど、個人も、手間の削減による利便性向上や可処分時間の向上などを享受できるようになってきている。

 このような中で、依然として、押印や書面、対面を通じて行われる伝統的な情報のやり取りが、技術革新の恩恵の広がりを阻む要因となっている。例えば、経理事務では、請求書や領収書のやり取りと入力作業など人の業務に頼った仕組みが少なからず残っており、取引情報の収集や一層の分析・活用を行う余地はいまだ大きい。法令に書面原則などの根拠を有するものはデジタル社会に即応して見直されなければならない。

 また、デジタル時代の基盤となるベース・レジストリ(公的情報基盤)については、重要性が長く唱えられながらも、肝となる行政の台帳間連携が進まず、理由すら明らかにされてこなかった。問題点の特定と精緻な解決がなされない限り、情報の出し手と受け手の両睨みが続くにすぎない。そこで成長戦略ワーキング・グループは、他の例に応用可能な形で個別事例の解決策を見出す方法でアプローチすることとした。

 利便性向上に向けた取組を推進すると同時に、安全性を確保することも忘れてはならない。デジタル時代においては、家電や自動車、工場などがデジタル技術を通じてネットワークで結ばれるようになる。サイバー空間における脅威が、ネットワークを通じて人の安全や生命にも影響を及ぼす可能性が高まっている。こうした新たな脅威に対しては、技術と法規制の双方の観点から対応を考えていく必要がある。法規制の強化であっても、デジタル化のための企業活動を円滑に進めるためには必要であり、こういった点について、規制改革の文脈で議論を行うことが重要である。

 企業の成長戦略を論じる上で気候変動問題も避けて通れない。企業は数々の技術革新により二酸化炭素の排出を削減する技術を蓄積してきた。カーボンニュートラルを目指すためには、まずは二酸化炭素を出さない技術の推進が重要であるが、将来の選択肢の一つであるCCS(二酸化炭素の回収・貯留)についても、最新の技術を反映して規制を刷新していく必要がある。

 以上を踏まえ、安心安全とイノベーションの両立に配慮し、イノベーションを支える基盤整備を着実に進めていくという観点から、今後取り組むべき規制改革項目を以下のとおり取りまとめた。

(1)民間における書面・押印・対面規制等の見直し

【a:令和3年度上期措置、b:令和3年度中に必要に応じて措置、c~g:措置済み】

<基本的考え方>

令和3年5月にデジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律

 (令和3年法律第 37 号)が成立し、押印や書面の交付等を求める手続を見直す48法律の一括改正が行われるなど、書面、押印、対面規制の見直しが加速度的に進められている。これにより、各種手続のデジタル化を阻害する基本的な規制が改革された。

 しかしながら、これらの見直しをデジタル社会の形成や感染症拡大防止の観点から実効性のあるものとするためには、規制の見直しに加えて、手続のデジタル化が着実に浸透するようフォローアップしていく必要がある。

 以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。

<実施事項>

  1. 内閣府及び法務省は、民法(明治29 年法律第89 号)第486 条の改正により、令和3年9月から弁済に係る受取証書について電磁的記録の提供の請求が可能となることを踏まえ、施行後に小売店等の店頭において混乱を来さないよう、あらかじめQ&A等で法令解釈を明らかにし、広く周知を図る。
  2. 法務省は、令和3年10 月以降に開催される株主総会について、新型コロナウイルス感染症の影響により株主総会資料のウェブ開示によるみなし提供制度の対象を拡大する措置が引き続き必要となった場合には、当該措置を講ずる。
  3. 経済産業省は、株主総会プロセスにおける企業と株主による対話の充実に向けて、ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施の推進のため、実施ガイドなどの更なる充実を図る。
  4. 国土交通省は、不動産の売買取引におけるオンラインによる重要事項の説明について、社会実験の結果を踏まえ、ガイドラインを改定し、テレビ会議等による非対面の説明が可能である旨を明らかにする。
  5. 国土交通省は、設計受託契約・工事監理受託契約に係るITを活用した重要事項の説明について、暫定的に運用しているテレビ会議等による非対面の説明を本格的に運用するためのガイドラインを整備する。
  6. 国土交通省は、建築基準法施行規則(昭和25 年建設省令第40 号)において義務付けている建築確認申請等における図面への押印を不要とするよう見直しを行い、改正措置を講ずる。
  7. 国土交通省は、建築士法(昭和25 年法律第202 号)第23 条に基づく建築士事務所の都道府県知事への登録について、同一都道府県内に複数の業務拠点を設けようとする場合等において、合理的な登録が可能となるよう要件を整理し、関係者に周知する。

(2)デジタル社会の基盤整備

ア 公的情報基盤の整備・連携

【令和3年度上期措置】

<基本的考え方>

 データ駆動型社会と言われ、あらゆる社会活動でデータ活用がされる中、社会の基盤となる情報をデータで整備し、連携・活用を図ることが一層重要となっている。

 特に、人、法人、土地、建物、資格等の公的情報基盤(ベース・レジストリ[2]を含む)については、社会の基本データとして、正確性や最新性が確保されたデータベースを整備するとともに、そのデータについて適切なアクセス・コントロールを設定し、できるだけ広く連携・活用を図ることが必要である。その際、各情報の個人情報保護に係る取扱い(※)について整理を行うことが重要な課題の1つとなる。

(※)保有個人情報に該当するか否か、該当する場合、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15 年法律第58 号。以下「行個法」という。)第8条[3]の規定に基づく目的外利用又は提供が可能か否かを始めとする各種個人情報保護法制における取扱い。

 成長戦略ワーキング・グループでは、事例の1つとして、土地・地図情報のデータベース整備において重要な情報である「地番」[4]について取り上げ、個人情報に係る取扱いの整理について議論を行った。

 「地番」については、まず先行して関係府省において取扱いの整理を行うとともに、今後、ベース・レジストリの整備において必要となる情報の取扱いについて、個人情報保護に係る取扱いを順次検討していく必要がある。また、並行して、今後個々の情報について個別に検討を行うことの限界も踏まえ、公的基盤情報の整備という類型に適用される個人情報保護に係る取扱いルールについて、一定程度横串を刺した整理のための検討を行う必要がある。

 以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。

<実施事項>

 内閣官房、内閣府、個人情報保護委員会、総務省、法務省及び農林水産省は、「地番」情報の個人情報保護に係る取扱いについて、情報の活用と個人情報保護の両面から整理を行う。

イ アジャイル型システム開発に係るルール整備

【a:措置済み、b:令和3年度上期検討開始、結論】

<基本的考え方>

 デジタル時代において、国際的な競争が加速する中、より速いスピードでシステムやソフトウェアの開発、提供が求められており、計画、設計、実装、テストを繰り返すアジャイル型のシステム開発が注目されている。開発に携わる企画者、設計者、プログラマー、テスター、運用者等は、通常、発注企業と受注企業、さらに受注企業の委託先等にそれぞれ属しているが、アジャイル型のシステム開発においては、ノウハウやアイディアを共有する観点から、上記関係者間において、綿密な意思疎通の下で協働することが不可欠となる。しかし、現行法制下では、これが直接的な指揮命令として、労働者派遣法(昭和60 年法律第88 号)5が禁止する「偽装請負」に該当すると判断される可能性がある。この点について、法的リスクがあるためにアジャイル型のシステム開発に踏み切れない、あるいはアジャイル型でシステム開発を実際に行ったとしても、偽装請負に該当すると判断されないようリスク回避のための管理コストや時間をかけており、速いスピードでの開発というアジャイル開発のメリットを十分に享受できない、といった声が上がっている。厚生労働省においては、こうした実態を踏まえ、早急に検討を行い、環境整備に努めることが求められる。

 なお、労働者の過重労働や下請事業者の不当な取扱いが是認されることを求めるものではなく、また、アジャイル型開発であれば、全て指揮命令に当たらないとの解釈を求めるものではない。

 以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。

<実施事項>

  1. 厚生労働省は、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61 年労働省告示第37 号)に関する疑義応答集6が、「システム開発」の現場にも適用され得る考え方であることを明確にし、周知を図る。
  2. 厚生労働省は、関係府省とも連携の上、アジャイル型開発の環境整備に向け、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準の具体的当てはめの明確化について、新しい開発手法を活用するベンチャー企業等を含めた実務者会合を早期に立ち上げ、システム開発の実態を踏まえつつ検討を行う。その結果に基づいて疑義応答集等で考え方を明らかにし、広く周知を図る。
    1. デジタル時代の刑事法の在り方(令和3年5月18 日規制改革推進会議)
    2. 2 ベース・レジストリ・ロードマップ(令和2年12 月21 日デジタル・ガバメント閣僚会議決定)において、IT室が指定することとされている。
    3. デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律による改正後の個人情報の保護に関する法律(平成15 年法律第57 号)第69 条
    4. 登記所が一筆の土地ごとに付するものであり、悉皆性・唯一性という観点から土地・地図情報のデータベースを作成する際、各筆の指標として利便性の高い情報である。